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【異常なのに平熱】『成瀬は天下を取りにいく』の何がすごいのか、やっぱりよくわからない

こんにちには、パンチです。

なんか……最近ずっともやもやしてるんですよ。

というのも、いま話題の小説『成瀬は天下を取りにいく』を読んだんですけど、読み終わっても「うおおおこれは……!!」ってならなかった。

正直に言うと、

「で、何がそんなにすごかったんだっけ?」

って首をひねっちゃったんですよね。

でも、たぶんそれには理由がある。
むしろ「すごさが伝わらないこと」そのものが、この作品のすごさなんじゃないか?

そんなことを考えながら、この記事を書いてみました。

あらすじをざっくり言うと「なんでもない話」です

中学2年生の成瀬あかりは、ある日「この夏は西武百貨店に捧げる」と宣言する。
毎日百貨店に通い、ローカル番組に映ろうとし、お笑いコンビを組んでM-1を目指し、高校の入学式には坊主頭で現れる。

すごいことをしてるのに、なぜか“ふつうの話”のように読めてしまう。

そんな奇妙で平熱な青春の記録。

「成瀬」がマジでよくわからん

読んでると、成瀬の発言や行動がどれも「一体なにを目指してるの?」とツッコミたくなるんですよ。
でも、彼女はいつも真剣そのもの。

突飛な言動でも、まったくふざけてない。
その真剣さが妙な説得力を持っていて、読者のほうが「これはこれで正しいのかも……」って思えてくる。

つまり、おかしいのに正しい。よくわからないのに納得してしまう。

そんな主人公です。完全に思考をかき乱されました。

「なぜこの作品が評価されてるのか?」を考えてみた

じゃあ、なんでこんなによくわからない作品が評価されてるのか。

その理由を、冷静に分析してみました。

1. いまどき珍しい「希望がある青春」

最近の青春モノって、どこか陰キャっぽかったり、生きづらさがテーマになってることが多い。
それはそれで刺さるんだけど、『成瀬は天下を取りにいく』は、ちょっと違う。

めちゃくちゃポジティブ。

だけど、ありがちな「夢はでっかく!自分を信じろ!」みたいな押しつけがましさがない。
ただただ、成瀬が自分のペースで「好きなことをやる」だけ。

それが妙にリアルで、心地いい。

2. ローカル描写が、えらい丁寧

舞台が滋賀県・大津市っていう時点で、かなり珍しい。

琵琶湖の描写、駅前の風景、地元のスーパー「平和堂(通称:Heiwado)」などなど、めちゃくちゃ具体的。

「滋賀って行ったことないけど、なんか行ってみたいかも」って思わせるだけの説得力がある。

地元愛、なのかもしれないけど、押しつけがましさがなくて、ただの風景のようにスッと入ってくる。

3. 成瀬というキャラの「現代的強さ」

成瀬って、一見ただの変な人なんですよ。
でもその「自分軸で生きる」感じが、いまの時代にはすごく刺さるのかもしれない。

・誰が何を言っても、自分のやりたいことをやる
・SNSの承認もいらない
・“空気を読む”という概念を捨ててる

強い。というか、図太い。

そしてそれが、ぜんぜん痛々しくない。

じゃあ、なぜ「よくわからない」のか?

ここまで書いてきてなんですが、やっぱり僕はまだ「この作品のすごさがよくわからない」んですよ。

理由をあえて言語化してみると、こんな感じかもしれない。

伏線も回収もない、のにスッキリする

ふつう、小説って「なにかの謎を回収する構造」だったりしますよね。

でもこの作品には、そういうものが一切ない。

・衝撃のラストもない
・どんでん返しもない
・大事件も起きない

なのに、「ああ、いい話だったなあ」と思えてしまう。

これ、たぶん“物語の温度”がうまく調整されてるから。

ずっとぬるま湯。ぬるま湯なんだけど、芯からあったまる。

「すごさ」が主張されてない

『成瀬は天下を取りにいく』って、
「私は文学だ!」「私は深いテーマを背負っている!」みたいな顔をまったくしてこない。

むしろ、スッピンで歩いてるような感じ。

だから、こちらが構えて読んでると拍子抜けしてしまう。

でも、多くの人がそれを「リアル」と感じてる。
逆に言えば、「物語っぽさ」が薄いことが、刺さってるのかもしれない。

読後にじわじわ残る“滋賀の風景”と“成瀬の背中”

読み終わって1週間たった今でも、ふと思い出すんです。

・あの文化祭のシーン
・ひとりで駅に立つ成瀬
・琵琶湖のきらめき
・Heiwadoの袋

そして、「あの人は、今どこで何をしているんだろうな」と。

物語は終わったのに、成瀬はまだどこかで動いている気がする。
それって、もしかしたら……とんでもないことなのかもしれない。

結論:「よくわからない」の正体は“正しすぎる日常”

というわけで、『成瀬は天下を取りにいく』の「すごさがわからない」というテーマで色々考えてみました。

結論としては──

すごさが伝わらないのは、あまりにも自然すぎるから。

なんですよね。

・キャラが奇抜なのに、変じゃない
・地元描写が緻密なのに、主張しすぎない
・何も起きないのに、満たされた気持ちになる

これ、めちゃくちゃ高度なことを、めちゃくちゃ地味にやってのけてる。

だから、「すごい……!」と膝を打つんじゃなくて、「あれ? なんかいいかも……」と眉間にしわが寄る。

そんな作品。

「何がすごいのかわからない」って、最強の褒め言葉かも

たぶん、10代のころに出会っていたら、もっと刺さったんじゃないかと思う。

いや、でも今だからこそ「わからなさ」に気づけたのかもしれない。

『成瀬は天下を取りにいく』は、誰かにおすすめするのがめちゃくちゃ難しい。

でも、読み終わったあとに「あの子、元気にしてるかな」って成瀬のことを思い出したら、それで充分なんだと思う。


「読めばわかるよ」じゃなくて、「読んでもわからないかもしれないけど、それがいいんだよ」

そんなふうに言いたくなる本でした。

読んでもピンとこなかった人、ようこそ。
あなたのその違和感、きっと大事にしていいと思います。

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